
1.心のブレーキ
江戸時代の禅僧、良寛さんの戒語を読んでいると思いあたることが多い。戒語とは自分自身を戒める言葉で他人に強要するものではない。自身の欲望と衝動の心にブレーキをかける言葉だろう。ブレーキのない自動車と同じように人の心もアクセルだけではとても危険。
特に思いあたる言葉は・・・。
・人のもの言いきらぬうちに、もの言う。
人が話をしているのにそれを遮(さえぎ)って自分の思いを主張する。自分を正当化しているのだろう。これはとても耳が痛い。
・へつらうこと
自分とは社会的な立場の強い人にこびへつらう。これもまったくないとは言い切れない。忖度をする自分が恥ずかしい。
・あなどること
自分とは社会的な立場の弱い人を軽蔑すること。邪な考えでおごり高ぶり見下すこと。へつらうこととは表裏の関係。もしかしたら己の本性かもしれない。意識してすることはなくても無意識にそのような行動をとることはあり、最も意識して戒めたい。
・じまんばなし
自分の言葉から自慢と愚痴を除いたらなにが残るだろう。
・よく心得ぬことを、人に教うる。
本当はよく分かっていないのに、知ったかぶりをして人に教えようとする。他人に先生とよばれたいと思っていないか。とても先生や指導者にはなれない。
良寛さんはよくこれだけ自身を戒める言葉を記されたものだ。日々の暮らしを振り返り思いあたったことの忘備録が戒語録となったのかもしれない。とても穏やかで他人にやさしい人であっただろうに。他人に対してやさしい人は自分に対してはとても厳しいのだろうと思う。
良寛さんの語録の背景には自分自身も間違いを犯したり、他人を傷つけるることもある、不完全で弱い人間なのだという深い自覚があったのだろう。そういえば良寛さんは大愚と名告っていた。愚かさの自覚があったのだろう。
2.良寛禅師戒語
ここから
①ことばの多き。②はなしの長き。③問わずがたり。④てがらばなし。⑤じまんばなし。⑥おのが氏素性の高きを、人に語る。⑦人のもの言いきらぬうちに、もの言う。⑧さしで口。⑨人の話のじゃまをする。⑩ことばのたがう。
⑪たやすく約束する。⑫人に物くれぬさきに、何々やろうという。⑬くれてのち、人に語る。⑭よく心得ぬことを、人に教うる。⑮おしはかりのことを、真実になして言う。⑯よく、ものの講釈をしたがる。⑰憂いある人の傍らに、歌うたう。⑱寝付かぬ人のかたわらに、話する。⑲しめやかなる座にて、心なくもの言う。⑳人のかくすことを、あからさまに言う。
㉑人の悪しきことを、喜んで言う。㉒口を耳つけて、ささやく。㉓人のことわりを、聞きとらずして、おのがことを言い通す。㉔悪しきと知りながら、言い通す。㉕まけおしみ。㉖さしてもなきことを論ずる。㉗人のことをよく聞かずして答える。㉘へつらうこと。㉙心にもなきことを言う。㉚あなどること。
㉛いやしき人を、かろしめる。㉜おろかな人を、あなどる。㉝下僕をつかうに、言葉のあらき。㉞はなであしらう。㉟口をすぼめて、もの言う。㊱顔を見つめて、ものいう。㊲首をねじりて、理屈いう。㊳このんで唐(から)言葉をつかう。㊴田舎者の江戸ことば。㊵都(みやこ)言葉などをおぼえ、したりがおに言う。
㊶人のいやがるおどけ。㊷いやしきおどけ。㊸悟りくさき話。㊹学者くさきはなし
㊺茶人くさきはなし。㊻風雅くさきはなし。㊼酒に酔いてことわり(理屈)いう。
㊽酔える人にことわりいう。㊾あくびとともに念仏。
ここまで
※良寛(りょうかん)
江戸後期の禅僧・歌人。号は大愚。越後の人。諸国を行脚の後、帰郷して国上山(くがみやま)の五合庵などに住し、村童を友とする脱俗生活を送る。書・漢詩・和歌にすぐれた。弟子貞心尼編の歌集「蓮(はちす)の露」などがある。(1758~1831)
広辞苑





























































































































