鯖江市歴史的建造物調査資料
1.概観(がいかん)
浄土真宗本願寺派。妙観山と号し、集落の北に迫る山裾(やますそ)の高台にたつ.山門はないが、本堂、鐘楼、経蔵、庫裏を備え、本堂と庫裏の間に望楼(ぼうろう)を上げるなど整った寺観を呈している。
2.本堂(ほんどう)
本堂は桁行(けたゆき)9間、梁間(はりま)9間、入母屋造、桟瓦葺(さんがわらぶき)の建物で、正面に幅3間分の向拝(こうはい)がつく。
内部は前方梁間(はりま)3間分を溜まり、その後方に幅1間半の外陣(げじん)をとる。後半部は中央が内陣(ないじん)で、その背面は中央に後戸(うしろど)をたて、両脇を脇壇(わきだん)とする。
内陣の左右はともに12畳大の余間(よま)である。
内陣の正面は両折れ戸、余間・外陣境は襖立てで、内法には金箔の彫刻欄間がみられる。
平面構成や華麗(かれい)な内部空間、意匠はまさに真宗の後門形式本堂の典型である。外周りは、正面が両折れ桟唐戸(さんからど)で、内法ガラス入り菱格子(ひしこうし)を入れている。
柱上には台輪(だいわ)を回し、組物(くみもの)は拳鼻(こぶしばな)付き出組(でぐみ)、軒支輪(のきしりん)つき、頭貫(かしらぬき)や内法虹梁(うちのりこうりょう)の絵様は簡素である。
内法虹梁の木鼻(きばな)は獅子頭(ししがしら)で隅柱の中ほどにつく。
向拝の水引虹梁(みずひきこうりょう)の木鼻はS字型の特徴的な龍の丸彫り影刻である。
3.経蔵(きょうぞう)
本堂右手前方の高台にたつ経蔵は「法宝蔵」の篇額(へんがく)を掲げている。
宝形造(ほうぎょうづくり)、桟瓦葺(さんがわらぶき)で、外壁や軒廻りを白漆喰(しろしっくい)で塗り込め、腰は下見板を張る。前方に向唐破風屋根(むかいからはふやね)で銅板葺の向拝(こうはい)を張り出す。
この向拝部は木部(もくぶ)を露見するが、獅子(しし)の木鼻(きばな)や中備(なかぞなえ)の龍、内法の獅子など彫刻が豊富にみられ、彫りの質も高い。建築年代は本堂の翌年、明治17年(1884)である。
4.鐘楼(しょうろう)
本堂の前方にたつ鐘楼(しょうろう)は、切妻造(きりづまづくり)、桟瓦葺(さんがわらぶき)、切り込みハギの石垣基壇(いしがききだん)にたつ。
頭貫(かしらぬき)と台輪(だいわ)に地紋彫(じもんぼり)がみられ、拳鼻付(こぶしばなつ)きの平三斗(ひらみつど)がつく。
妻は虹梁(こうりょう)・大瓶束(たいへいづか)で、柱の転びが緩(ゆる)く、簡素な形式の鐘楼(しょうろう)である。この鐘楼は明治の火災後の再建に際し、他所から移築されたと伝わっている,
様式的にみて江戸末期の建立とみられる。当寺では天保ころの建築と伝わっているが、この言い伝えはほぼ妥当であろう。