よもやま話

日常の生活の中で生きるヒントを見つけたいと思います

心を傷つけるもの

理容店の壁に掲示してある 直筆の言葉


私は職人さんの話を聞いたり道具を見せていただくのが好きです。兼職で写真現像業を営んでいたときは、業務用機械のメンテナンスは自分でしていました。長年使っていた機械には愛着もでてきます。手になじんだ道具もあります。

私自身にも職人気質(かたぎ)の一面があると思います。         

そのようなわけで、道具を見れば職人さんの歩んで来た人生を、かいま見ることができるように思えます。

私は散髪をするとき、いつもご門徒の理容店を利用しています。先日、散髪をしていただいた後、お願いをして長年使っておられる道具を見せていただきました。今、私の髪を切ったハサミです。

親の代から使っておられるハサミや砥石は、長年研いできたためすり減っています。ハサミも砥石も今では手に入らないものもあります。見せていただいて、ご門徒さんが誠実で実直な人生を歩んでこられたことがよく分かりました。

今年で90歳。現役で仕事をしておられます。ハサミを持つ手も確かです。
仕事を続けておられる理由を尋ねると「人と会い会話をするため」と言われました。
長いお付き合いですが、まだまだ学ぶことがあります。

壁に掛けてある鏡は百年間使っている鏡。この鏡はどれだけ多くの人の姿を映してきたのでしょう。子どものころから来ておられる常連さん達が、連名で書かれた感謝状もあります。


壁には、直筆の言葉も掲げられいました。

言葉は 刃以上 
人の心 傷付ける

時に口・言葉は 刃以上に
人の心を 傷付ける

言葉の
消しゴムは 無いのです

善意も 
悪と化すこと 少なからず


相手の身になり 何よりも 
言葉を

発する前に 心得る


数十年の間、研ぎすまされたハサミや剃刀を、手にしてこられた方の言葉です。

深く肯(うなづ)いて店をでました。

 

親の代から使っている砥石
今は手に入らないそうです

 

長年研いでいるので刃がすり減っています
手になじんでいます



切り込みが両刃にあるハサミ
今は無いそうです