赤いシクラメンの花は
きょねんもおととしも
そのまえのとしも
冬のわたしのしごとばの紅一点
ひとつひとつ
いつとはなしにひらいては
しごとちゅうのわたしと
ひとみをかわす。
きょねんもおととしも
そのまえのとしも
ベトナムの子どもの頭のうえに
ばくだんはかぎりなくふった。
赤いシクラメンの
そのすきとおった
花びらのなかから
しんでいったその子たちの
ひとみがささやく。
あたしたちの一生は
ずーっと
せんそうのなかだけだった。
岩崎ちひろ・作『戦火のなかの子どもたち』岩崎書店 より
いわさきちひろは
福井県越前市で生まれました
東京大空襲も体験しています
シクラメンの花が
平和のかがりびに
なればよいのですが・・。
優しさと悲しさは
切り離すことができないようです
参考図書
『雪の降る朝 -岩崎文江と娘ちひろ-』上坂紀夫著
「ちひろの生まれた家」記念館
https://chihironoie.jp/profile