福井県越前市で生まれた、岩崎ちひろさんの代表作『戦火のなかの子どもたち』と、上坂紀夫著『雪の降る朝』を読んでいます。
岩崎ちひろさんの冬の仕事場には、赤いシクラメンの花がありました。
自身が東京大空襲を経験し、ベトナム戦争の時代を生きたちひろさんは、『戦火のなかのこどもたち』の絵本で、赤いシクラメンの花びらのなかに、ベトナム戦争で死んでいった子どもたちの顔を画いています。
赤いシクラメンの花は、世界中の戦争で死んでいった子どもたちの、いのちを象徴する花でした。
絵本には戦火のなかで頭上から爆弾がふってきて、銃弾も飛び交っていることを想像させる大きな空白の下に、地面に身を伏せている子どもの顔が画かれています。
その、一字も文字の書かれていないページの大きな空白には、読む人に子どもの目に見えている光景や、耳に聞こえている音を、想像させようとする緊張感がみなぎっています。
赤いシクラメンの花びらを二度と踏みにじらせてはならない、そんな強い決意が感じられます。花びらにはいのちの尊さを伝える力もあるようです。私がハスの花びらからいのちの尊さを学ぶように・・。
かぎりなく優しい絵には、かぎりない悲しさが共存しているように思えます。
ちひろさんは昭和38年にウクライナのキーウを訪ねていますが、いまのウクライナの子どもたちを見たらどのように思うでしょう。
シクラメンの花びらは何を語るのでしょう。それを私は想像できるでしょうか。
それは私自身の問題なのだろうと思います。
追記
余白を見る・行間を読む・沈黙の時間を聞く、そんなことも大切なのだろうと思います。余分なものを全部削ぎ取ったあとに残るものが、大切なことを語りかけてきます。饒舌である必要はありません。